遺言書の保管と執行
遺言は書面で書き残す事になっていますが、遺言によって自らの意思を実現するためには、その遺言書を相続人に見つけてもらう必要があります。
発見してもらえなければ、折角作成した遺言の執行ができないことになってしまいます。
従って、遺言書は遺言者が亡くなった後に、相続人らがすぐにわかるような 場所で、かつ隠されたり、勝手に書き換えられたりする心配の無い場所に 保管しておく必要があります。 自筆証書遺言の場合、発見されない場合もありますので、安全のため公正証書遺言をお勧め致します。
公正証書遺言の場合
公正証書による遺言は、遺言書の原本が公証役場に保管されています。従って、相続人らに遺言書を作成してある公証役場の場所を伝えておけば十分です。
遺言書の存在が明らかになっても、遺言者以外の者が遺言者の生前に公証役場を訪れて遺言書の内容を教えて欲しいと要求したり、閲覧を請求したりしても、公証人がこれに応じることはできません。
「遺言執行とは」
遺言書を書いた本人(遺言者)が亡くなった場合、自動的に遺言書の内容が実現するわけではありません。
遺言書の内容に従って実際に財産分けを行う必要があります。この「遺言書の内容に従って、実際に財産分けを行う」行為を遺言執行といい、この取り仕切りを行う人が遺言執行者です。
民法上、遺言執行者は必ず指定しなければならないわけではありません。しかし、あらかじめ遺言執行者を指定しておくことで、以下のような様々なメリットがあります。
複雑な相続手続きがスムーズに進行できる
通常であれば、預貯金の名義変更や相続登記等の手続きなど相続人全員の署名・押印が必要となりかなりの時間と手間が掛かりますが、遺言執行者が単独で行うことが出来るので、大幅な時間短縮になります。
確実に、遺言書の内容を実現できる
たとえ遺言があったとしても、遺言書の内容に納得できない相続人が1名でもいて、その方が反発すれば遺産分割がストップしてしまいます。しかし、遺言執行者を決めておけば、執行に関する全権限を持っていますので、遺言書の内容を確実に実現することができます。
面倒な手続きは一切不要です
遺言内容を実現する手続きは、実はとても複雑で面倒です。財産の調査(証券会社・金融機関・市役所での手続き)、不動産の名義変更(法務局での手続き)など、全ての手続きをもれなく完璧に行い、財産によっては何十枚、何百枚の書類に目を通して、署名する必要があります。しかし、遺言執行者を相続手続きの専門家に依頼すれば、このような面倒な手続きの一切を代行して行うので、時間と労力がかからずにすみます。
当事務所では、遺言書で遺言執行者に指定いただいている場合の遺言執行のほか、遺言執行者が指定されていない場合の家庭裁判所における遺言執行者選任申立手続のサポートや遺言執行者への就任、遺言執行者に指定されている相続人や受遺者の方の遺言執行業務のサポートをさせていただいておりますので、ぜひご相談下さい。
相続人の確定は、被相続人(亡くなられた方)の出生時からお亡くなりになられるまでの戸籍関係書類(戸籍・除籍・改製原戸籍謄本等)を取得します。
また相続人・受遺者の住所も確認します(戸籍の附票を取得します。)
遺言書の検認手続は、遺言者死亡時における遺言書の現状を検証する証拠保全のための手続です。
遺言執行者に就職したときは、遺言書の存在及び遺言執行者に就職したことを、紛争防止等のためにも相続人・受遺者に通知します。
相続財産の目録を調製して、相続人に交付します。
相続財産の目録を調製すれば、管理すべき財産の範囲およびその内容を把握することができ、遺言書の記載内容に従って執行することになります。
具体的には、不動産の相続による所有権移転登記手続、銀行預金の名義変更または解約手続、株式の名義変更手続等を行います。
その他下記のような手続きをします。
- 相続財産の不法占有者に対して明け渡しや、移転の請求をする
- 認知の届出をする認知の遺言があるときは、戸籍の届出をします。
- 相続人廃除、廃除の取り消しを家庭裁判所に申し立てる
遺言執行事務手続が全て終了したときは、その旨の報告書を作成して、相続人・受遺者に対して通知します。
遺言執行者はこのような職務をこなしていかなければなりません。 調査、執行内容は相続人に報告していく義務がありますが、執行が済む まではすべての財産の持ち出しを差し止める権限を持っています。
相続人は、遺言執行の職務を終了したとき、それに応じた報酬を 遺言執行者に支払います。
遺言執行など複雑な手続きの処理をまかせるなら、やはり専門知識をもった 司法書士等の専門家に、その職務を依頼することが望ましいです。